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ミャンマー東部シュエコッコに沈む夕日=2025年2月28日、タイ北西部メソト近郊、伊藤弘毅撮影

 ミャンマー東部のタイ国境地域で、カジノやホテルを備えた複数の都市を根城に、中国系犯罪組織が多くの外国人を特殊詐欺に従事させていたことが世界中に知られた。「パーク(園区)」と呼ばれるそれらの拠点を「職場」とし、施設管理などの仕事のため国境を越えてタイ側から通勤する人たちがいる。地元住民からそんな話を聞き、取材を試みた。

 現在、入管当局は観光客らの出入国を止めているものの、通行証を持つタイ人とミャンマー人は両国間を行き来できる状況だ。

 国際詐欺集団の犯罪拠点に、日本人を含む多数の外国人が拘束されていたミャンマー東部。中国企業も絡んで開発された「パーク(園区)」と呼ばれる都市群は、隣国タイの人びとにとっては商売相手にもなっていたようだ。現場を歩き、その実態と背景事情を探った。

 平日の夕刻、ミャンマー側の街ミャワディとの間にかかる「第1友好橋」の入管施設前で、タイ側のメソトに戻る人に声をかけた。ミャワディのカジノで遊んだ帰りだという高齢の女性は「タイ人も中国人も、客は以前と比べて減っている」。あるタイ人男性は、「パークで働く人は、入管を通過するとすぐにバンに乗り込んでしまうから、知り合う機会はないよ」と言った。1時間ほど粘ったが、目当ての労働者は見つけ出せなかった。

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タイ・ミャンマー間の「第1友好橋」国境ゲート=2025年2月28日、タイ北西部メソト、伊藤弘毅撮影

 タイは近年、中国本土との関係を深めてきた。メソト周辺の人びとは、川向こうの「中国」の出現も好機ととらえたようだ。2010年代後半にミャンマー側で、地元の武装勢力と中国企業が150億ドル(約2兆2千億円)規模とされる「国際都市」の整備を始めると、メソト周辺の住民も関連する様々なビジネスに関わり始めた。

建材・物流企業が、国境の川で「港」の運営を始めた理由

 元々、ミャンマー側と国境を…

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